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第1次世界大戦の頃より“海を制する者は世界を制す”
とばかり世界の大国は海軍の拡張、建艦競争を競っていました。
しかし、第1次大戦の終結に伴い、
まずイギリスが財政負担に耐えきれずに音を上げ、
さらにアメリカ、日本も国内事情から無理な状況となり、
アメリカが音頭を とってワシントン条約を、
さらにロンドン軍縮条約を発効させるにいたります。
日本海軍は対米英7割を主張したものの入れられず、
6割に甘んじなければなりませんでした。
このため戦艦、空母に大きな制限が加えられ、
結局正規空母としては赤城、加賀、翔鶴、瑞鶴の大型空母4艦と
蒼龍、飛龍の中型空母2艦の保有が認められたのみでした。
当然日本海軍としてはこの結果に不満でした。
そのため大型商船や水上機母艦、潜水母艦、給油艦などの
他艦種よりの転用をあらかじめ想定しておくという方策がとられました。
飛鷹、隼鷹が大型商船からの改造例で、
祥鳳、瑞鳳が他艦種からの改造例となります。
さて、祥鳳は当初、給油艦剣埼として計画され
昭和10年(1935年)6月に横須賀工廠で進水しました。
しかし、艤装工事途中で潜水母艦への改造に着手、
昭和14年(1939年)1月に潜水母艦として竣工しました。
しかし、折からロンドン軍縮条約が失効したため、
昭和16年(1941年)1月わずか2年で再び改装工事に入り、
航空母艦へとその姿を変容してゆます。
元々潜水母艦であったため工事は順調に進捗し、
工期1年、昭和17年(1942年)1月に
平型甲板を持つ航空母艦として生まれ変わります。
平型甲板としたのは剣埼の艦橋装備をある程度流用して
工事期間の短縮を図ったものと思われます。
なお、完成に先立つ12月には艦名が剣埼から祥鳳へと変更になっています。
祥鳳は完成すると即日第1航空艦隊第4航空戦隊へと編入されました。
さて、日本軍は昭和16年(1941年)12月のハワイ攻撃、
さらにシンガポール攻略、フィリピン攻略などの第1段作戦が順調に推移したため、
長期持久を図るべく第2段作戦に着手します。
その手始めが米、豪遮断を目的としたポートモレスビー攻略作戦、MO作戦です。
この作戦には1航艦5航戦の翔鶴、瑞鶴を基幹とした機動部隊をあて、
さらにポートモレスビーを攻略するための
第6戦隊の青葉、加古など重巡洋艦を基幹とする艦隊に祥鳳が
航空援護の傘を掛ける役割で随伴していました。
一方米海軍は暗号を解読して日本艦隊のポートモレスビー攻略の企図を察知、
レキシントン、ヨークタウンの2空母を基幹とする機動部隊で待ちかまえていたのです。
所はニューギニア東南方海上、珊瑚海。 時は昭和17年(1942年)5月7日のことです。
この美しい海に歴史上始めて空母隊空母の決戦がおこなわれることになります。
まず、先手をとったのはアメリカ海軍。
2つに分かれている日本艦隊の一方の重巡基幹の攻略部隊を発見、
祥鳳が随伴していたためこれを機動部隊と判断して全力攻撃をかけます。
レキシントン、ヨークタウンから93機の雷爆撃機が発艦、
すべてを祥鳳に集中したのです。
このため爆弾13発、魚雷7発が命中(驚くべき数です。
これは後の大和、武蔵と遜色ありません。
状況が違うとは言え数発の爆弾だけで戦闘不能になった
ミッドウエーの空母を思うといかに獅子奮迅の戦いをしたかが判ります。)、
祥鳳は空母としてはわずか3ヶ月半の短い生涯を
エメラルドグリーンの美しい海に没してしまいました。
一方日本海軍は同じ頃攻撃隊を発進させるも空母と誤認した
給油艦ネオショーを大破させ(後、沈没)駆逐艦1隻を撃沈したのみでした。
しかし、祥鳳の尊い犠牲により敵艦隊の位置を確認した日本機動部隊は、
翌5月8日に全力攻撃を敢行、レキシントンを撃沈し、
ヨークタウンにも大損害を与えたのです。
しかし、日本側も米海軍機の攻撃を受け翔鶴が中破する損害を被っています。
この戦いは日米双方とも搭載航空機に大きな損害をだし、
また空母も傷ついたため徹底して戦果を拡大するには至りませんでしたが、
戦い自体は日本優勢の引き分けと言うべきでしょう。
しかし、翔鶴が傷つき、瑞鶴も航空機を失ったため、
6月のミッドウエー攻撃には4艦の空母で出陣しなければならず、
それが遠因で、4空母すべてを失うはめになったことを思うと
祥鳳の犠牲が充分活かされず悔やまれます。
なお、この祥鳳の損失は太平洋戦争における空母の損失第1号でした。
(要 目)開戦時
基準排水量:11,200トン
飛行甲板長:180m×30.5m
水線長:201.43m
水線幅:18m
主 機:ロ式艦本式缶 2軸
速 力:28ノット
航続力:18ノット7,800海里
兵 装:12.7cm連装高角砲×4門 25mm3連装機銃×4
搭載機:96式艦上戦闘機及び零式艦上戦闘機21型 18機、
補用3機 九七式三号艦上攻撃機 9機