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戦争初期を勝利で飾った零戦は、
1000馬力に満たないエンジンでできる限りの飛行性能を実現した
素晴らしい戦闘機でした。
優秀な機体だからこそ、メーカーも軍もさらに良いものを求めるようになり、
太平洋戦争開戦の1年も前の昭和16年初めに
エンジン換装を含めたA6M3型の開発が開始されました。
開発の主眼は、メーカー側はエンジン換装による高空性能の向上を、
用兵側は主翼折り畳み装置の廃止によるロール(横転)率、速度性能の向上、
および生産性、整備性の向上等に置かれました。
エンジンは1段2速過給器付の性能向上型栄21型が用意され
プロペラも、増えた馬力を吸収するために
直径が15cm大 きくなったハミルトン恒速式プロペラが装備されました。
エンジンの性能が向上した反面、重量が増大した為
取り付け部分および胴体が大幅な変更を受けた結果、
零戦21型に比べ胴体が短縮されました。
また、カウリングも空力的洗練の向上の為再設計され、
気化器取入れ口が下から上に移動しました。
翼端は角形に整形され合計1m短縮されました。
主翼固定武装の20mm機関砲も
弾数の増えた99式2号固定銃2型に換えられました。
こうして改修されたA6M3は、
昭和16年7月14日に初飛行し、数々のテストの結果、
零式2号艦上戦闘機32型として海軍に採用され
ソロモン、南西太平洋に配備され活躍しました。
このような改修を受け、速度、ロール率等の向上した反面、
水平面での運動性と零戦の特徴である航続性能が大幅に低下しました。
就役当初はそれほど問題にならなかったものの、
ラバウルからガダルカナルへの長距離侵攻が始まると
航続距離のなさがクローズアップされるようになりました。
そこで主翼の幅を12mに戻し
外翼内に燃料タンクを増設した航続性能向上型が作られ、
零式2型艦上戦闘機22型として昭和18年1月29日に採用されました。
22型は32型に比べ航続距離が延び、
32型がこの後、新型機でありながら訓練部隊に回されたのに対し
22型はソロモン方面の航空戦の主役として活躍しました。
また、それぞれの型で、主翼内の武装を長銃身の99式2号固定銃3型に換えた
22型甲・32型甲も作られました。
《データ》三菱 零式艦上戦闘機 32型
乗員:1名
全幅:11.00m
全長:9.060m
全高:3.570m
最大速度:544.5km/h(6,000m)
エンジン:「栄」21型(離昇出力1,130hp)
武装:7.7mm機銃×2 20mm機関砲×2